実夏の あっ地こっ馳 紀行

ご注意;★このブログの登場人物はフィクションです。
■  9月6日  サハリン = 立柳さん
 にっぽん丸のツアースタッフは、水色のおそろいのポロシャツを着ている。制服というわけではないだろうけど、一目でわかるし、活動的だし、なんといってもかわいい。あたしたちのダーチャ・ツアーの添乗員さんも、そのシャツを着ていた。20代後半だろうか。ショートボブで、ポロシャツと笑顔が似合っている。
「初めまして、立柳安理沙(たちやな ありさ)と申します。じつは、学校でロシア文学を専攻していて、ツアーコンダクターの仕事は年に数回しかしていません。慣れていないこともありますけど、よろしくお願いします」
と自己紹介してくれた。きのう、モリさんが教えてくれたとおり、文学に詳しいガイドさんだ。あたしにとって、最高の人選だ。
 立柳さんさんが、運転手さんに「ミーニャ、ザブート、タチヤーナ」と自己紹介する。運転手さんが「そうかい、タチヤーナちゃんっていうのかい」みたいなリアクションをした。タチヤーナさんって、ロシアではわりと一般的な名前らしい。
 ツアー中の注意事項と簡単な案内をしてくれたあと、立柳さんは補助いすをばたんと倒して、私たちの隣に腰かけた。
「モリさんから聞きましたよ。宮沢賢治の謎、解いているんですって?」
 夏実お姉ちゃんのほうを向いてそう話しかけた。
「それをやっているのは妹のほうです」
「あら、ごめんなさい」
「立柳さんも宮沢賢治を?」
「いいえ、私の専攻はチェーホフ。『かもめ』を一語一語読み解いているの。読んだこと、ある?」
 文芸部で文士劇をやるだの、やらないだのといったとき、流し読みしたことはある。デカダンじみた劇中劇のヒロイン、ニーナさんがアイドルスカウトに引っかかって、殺人事件に巻き込まれるという…え?違ったっけ。
 あたしの『かもめ』のあらすじを聞いて、立柳さんと夏実お姉ちゃんが腹を抱えて笑った。
「実夏、ちょっと、そんなんでホントに宮沢賢治の謎、解くつもり?」
 いいじゃん。賢治もきっと、「『かもめ』は関係ない。波に聞け」っていってくれるよ。

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《わたしゃ立つ鳥、波に聞け》
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