実夏の あっ地こっ馳 紀行

ご注意;★このブログの登場人物はフィクションです。
20歳になりました。
20歳になりました。

いままで、ありがとうございました。

これからも、よろしくお願いします。

             尾花 実夏
             荻野 夏美

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■ 9月5日 小樽出帆 =コンサートがはねて
 コンサートがはねて、あたしと夏実お姉ちゃんはデッキに出た。冷たい秋の風が気持ちいい。コンサートの熱気に、すこし火照っていたようだった。北に向かう船のクォーターデッキ(船尾)だから、南の星座が見える。東京あたりだったら、フォーマルフォートや南斗六星が見えるはずだけど、緯度が高いのと、南の水平線がかすんでいるのとで、はっきり見えなかった。ファンネル(えんとつ)の上では、夏の大三角形が最後の栄光を見せていた。東の空には、ペガサスとアンドロメダが、秋の四角形を作って、はくちょう座を押し出そうとしていた。
 2011年の沖縄クルーズのときは、あたしと夏実お姉ちゃんとで、このデッキで星に関する歌を次々と歌った。
「また、歌おうか。実夏」
「え?星の歌?」
「ロシア民謡はどう?」
「レパートリーないよ」
「うーん、北の歌は?」
「演歌になっちゃうかも」
「うるさいなあ、じゃあ、実夏が決めてよ」
 うるさくないけどなあ。ま、いいか。
「じゃあね、カチューシャにちなんで、女の子の名前の歌」
「よっし。受けて立つわ!」
 一曲目がお姉ちゃんの『ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンド』。ビートルズかい。まけないよ。『フランシーヌの場合』。どうだ、お姉ちゃん。そのあと、童謡の『さっちゃん』。みんなの歌の『ユミちゃんの引っ越し』そして、少女アニメが延々と続いて、最後はサザンの『いとしのエリー』『チャコの海岸物語』『栞のテーマ』になった。ふう。疲れたなあ。ロシア、ぜんぜん関係ないよ。
「あのさ、わたしたちもアカペラのボーカルグループ、作りたいね」
「あと3人、だれ?」
「ルナナさん、プロ級なんだよ」
「添乗員の? 宴会芸で披露するの?」
「宴会のときは、わざと下手に歌うんだって。ヨーロッパを貧乏旅行していたころ、帰りの航空券を売っちゃって、とうとう無一文になっちゃったんだって。で、イタリアのカンポ広場で歌うたって稼いで、何とか帰ってきたって自慢していたよ」
 それって、不法労働じゃん。
「そういえば、チャイキャベちゃんも上手だよ。本人は、楽譜どおりにしか歌えない、って謙遜してるけど」 
「そうなんだ。聞いてみたいね」
「あとは…あ、チャコ従姉ちゃんは?」
あたしがそういうと、夏実お姉ちゃんは立ち上がって両手を大きく振って否定した。
「だめだめ、親族一の音痴なんだ。箱根のウグイスをひと夏黙らせたってエピソードの持ち主だよ。別名、ウグイス殺しのチャコ」
 ど、どんな音痴なんだろう。

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《コンサートがはねて、デッキに出た》
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■ 9月5日 小樽出帆 = ドルフィンホール
 

 夕食後は、ドルフィンホールでコンサートがあった。アカペラの男声合唱団だった。
 男の人が5人。いろいろなジャンルの歌を歌ってくれたけど、やっぱりイメージにぴったりだったのは、ロシア民謡だ。かつて、日本でも学生運動が盛んだったころ、ロシア民謡ブームがあったらしい。「カチューシャ」とか「ともしび」とか、CMソングかと思っていたら、ロシアの歌だったというのがたくさんあった。
「ねえ、ママたちも大学で歌ったの?」
「ちょっと、そんなおばさんじゃないわよ。失礼しちゃうわね」
「そうよ。私と弥生さんたちは、聖子ちゃんがステージを去ったころの歌で育ったのよ」
「チャゲアスとかミポリンとかね」
「キョンキョンはまだ頑張って、くすぶってたわねえ」
「わたしはMi-keも好きだったなあ。歌唱力あったし。『ブルーライト・ヨコスカ』とかね」
「サザンも元気だったでしょ。『稲村ジェーン』の『真夏の果実』」
 弥生ママとさくらママが思い出話を始めた。そんな歳なんだ、ふたりとも。でも、ぜんぜんロシアの歌じゃないよ。神奈川県の匂いがぷんぷんするよ。

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《夕食後は、ドルフィンホールで》
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■ 9月5日 小樽出帆 = ホワイトサラダ

 メインダイニングの「瑞穂」の入口で、パーサーさんが席を案内してくれた。窓の外は日が沈んで、青い色になっている。宮澤賢治の詩に書いてあった「玲瓏レンズ」って、こんな色かな。
 にっぽん丸の食事のことはもう、書かなくていいよね。おいしさの中に、暖かさが隠れている。心がこもっていておいしい料理は、確かににっぽん丸でなくても食べられるけど、そんな食べ物を500食大量生産するんだから、やはりこの船はすごい。すごいとか、おいしいとか、もうそんな言葉でしか表現できないなんて、あたしの文章力、まだまだだね。
 メニューのなかで面白かったのが、「ホワイトサラダ」だった。白い野菜を集めて刻んで、マッシュポテトの上に載せ、白いドレッシングで和えてある。お皿も白色だった。
「ひどい! イラストレーター泣かせだわ、このサラダ!!」
弥生ママが笑いながら叫んだ。白だけを使って、サラダをおいしそうに描くのって、難しいだろうなあ。ママ、がんばって!
 でも、このサラダ、白いだけじゃないんだ。ダイコンか何かを型抜きしたものが載っていた。その形が北海道の形だった。これ、厨房で一つひとつ、500個抜いたんだろうか。

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《白だけを使って、サラダをおいしそうに描くのって》
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■ 9月5日 小樽出帆 = ウェルカム・ディナーが待っている

 日本海に夕日が沈むと、夕ごはんの時間だ。ダイニング「瑞穂」でウェルカム・ディナーが待っている。
 夕ごはんから寝るまでは、ドレスコードが決まっている。ほんとうなら今日は出帆日だからドレスコードはカジュアルのはずだ。そんなことをいってたら、2泊3日のショートクルーズではおしゃれをするチャンスがない。今日のドレスコードはスマートカジュアル。にっぽん丸ならではの、気取らないおしゃれができる晩だ。
 夏休みに夏実お姉ちゃんが作ったタイタニックドレスは、フォーマルすぎてコードに合わない。そのあたりを何度も念を押して、どんな洋服にするかは夏実お姉ちゃんに任せた。自分で選んでもいいんだけど、一生のうちに何度あるかわからない、きょうだい二人のクルーズ・ディナーだ。コスチュームマニアの姉に任せてあげるのも、かわいい妹としてのせい一杯の姉孝行だ。半分は面倒くさいだけなんだけど。そして、かなり勇気いるけど。
 スーツケースから夏実お姉ちゃんが取り出したのは、紺色とベージュのスーツだった。お姉ちゃんがスカートとブラウス。あたしがボレロのアンサンブルだった。船室で着けてみるとけっこう清楚な少女に見える。オバサン受けしそうなデザインだね。外に出ていこうとすると、
「ちょっと待って、これ着けて」
って、夏実お姉ちゃん。手にはベージュのカチューシャがあった。え?この歳でカチュですかぁ!?
「だって、ロシアっていったら、カチューシャでしょ。カチューシャかわいや別れの・・・」
 はいはい。着けますよ。だから、お姉ちゃん、大声で歌わないで。

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《船室で着けてみるとけっこう清楚な少女に見える》
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■ 9月5日 小樽出帆 = クルーズ説明会

 船室に戻ってメモ帳とシャーペンをとってきた。ドルフィンホールには二人のママと夏実お姉ちゃんが先に入っていて、席をとっていてくれた。
「あれ?トラベルライターになるのに、筆記用具は肌身離さずもっていないの」
って、夏実お姉ちゃんが冷やかす。うるさいなあ、もう。
 弥生ママは小型のスケッチブックを広げて、絵や文字を書いていた。ホールのインテリアやお客さんの様子を次々に紙に写しとっていた。説明が始まると、パーサーさんの表情や仕草を描きながら、言葉で説明してくれたことを文字にしていった。速い! ママの特技を目の前で見せられてしまった。
 説明会はわかりやすかった。サハリンの気候、歩き方、オプショナルツアーの内容など、詳しく、といっても、ネタばれしないように、わくわく感たっぷりに教えてくれた。学校の授業も、こんなふうだったらいいのにね。

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《わくわく感たっぷりに教えてくれた》
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■ 9月5日 小樽出帆 =
 
 空色の空と水色の日本海の間に、初秋の北海道の深くて淡い緑色の森が見えている。大型フェリーの岸壁を見ながら赤灯台を交わすと、小樽の街がだんだん遠くなる。日本海、港、船出、といえば演歌の世界になっちゃうけど、もっとカラっとさわやかだった。
 小樽港を出帆したらすぐに航海の説明会が始まる。出入国手続きや、オプショナルツアーの案内をしてくれる。あたしはいつまでもこの景色を見ていたかった。だから、ちょっと弥生ママに甘えてみた。
「弥生ママ、説明会、出なくていいかな?」
「強制じゃないけどね…」
 なにか含みをもたせて笑っている。いやないい方だなぁ。
「けど、なぁに」
「実夏は旅行作家になりたいんでしょ?」
「そうだよ。だから、この景色、眼と胸に焼きつけておきたいんだ」
「それは、カメラマンとかイラストレーターさんのお仕事。この景色なら、文章量は160字ぐらいですんじゃうでしょ。ライターさんは、人の話を聞いて読者に伝えるのが本業なの。今度の航海はママもイラストだけじゃなくてテキストも書かなきゃいけないから、説明会の取材もするわよ。実夏だって、メモ帳もって話を聞いてみたら? 取材の練習になるよ」
 そういわれてしまえば、いいかえせない。後ろで夏実お姉ちゃんが笑っている。悔しいなあ。

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《あたしはいつまでもこの景色を見ていたかった》
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■ 9月5日 小樽出帆 =セイル・アウェイ

 船内をうろうろしている間に、出帆の時間が近づいてきた。避難訓練を兼ねたセイルアウェイ・パーティーが、プロムナードデッキで始まる。キャビンに戻って、ロッカーの上にあるライフジャケットを着けた。夏実お姉ちゃんは、ライフジャケットの胸のところに制服のようなリボンを結んだ。そこまでおしゃれにこだわるか!
 弥生ママとさくらママがあたしたちのキャビンをノックした。
「うんうん、実夏、ライフジャケット似合ってるよ」
 救命胴衣が似合っているなんて、あまり嬉しくない。
「そうじゃなくて、台湾クルーズのときは子ども向けのライフジャケットだったでしょ。大人向けのジャケットが似合うほど成長したんだね」
「…あ、ありがとう」
 ここまで育ててくれて、という言葉は飲み込んだ。そういう言葉は、はるか先の結婚式までとっておかなくちゃ。
 にっぽん丸4階のプロムナードデッキは、小樽の岸壁の倉庫の屋根よりも高い位置だった。倉庫の屋根には「ようこそ小樽へ」と書かれていた。客船誘致に熱心なんだね。藤沢の片瀬漁港、負けられないぞ。「ようこそ」の文字の下では、太鼓が披露され、役所の職員が横断幕を持って見送りに来てくれていた。運河とオルゴール館にいる観光客も呼べばいいのに。小樽にとっても、にっぽん丸にとっても、クルーズ業界にとっても、絶好のアピールになると思うよ。
 デッキでは、お酒とジュースがふるまわれ、紙テープが配られた。夏実お姉ちゃんは、紙テープの芯を丁寧に外してから投げていた。倉庫の天井より高いデッキから直撃したら、たしかに危険だ。
「へぇ、意外と優しいんだね、夏実お姉ちゃん」
「じつはね、芯を抜いた紙テープ、投げてみたかったんだ」
「誰から聞いたの?そんな裏技」
「元・全キャン連のおじさん」
「なに連?」
「キャンディーズのファンクラブだよ。芯抜きテープは、全キャン連が始めたんだって。もちろん、ステージの蘭ちゃんたちに危険を及ぼさないためだって」
 ごめん、聞くんじゃなかった。
 ドラが鳴った。出帆5分前だ。スピーカーからマーチが流れた。お姉ちゃんは『暑中お見舞い申し上げます』をマーチふうにアレンジして、鼻歌で歌っている。ホーサーが外され、スラスターが回った。キャプテンがフライデッキに出てきた。
 マーチが『蛍の光』に代わった。思わずお姉ちゃんと顔を見合わせた。以前、客船の出帆のとき、短調の『蛍の光』は似合わない、って話を二人でしたことがある。セイルアウェイというわくわくする瞬間に、さみしすぎるよね。もっと、これから始まる船旅に向けた曲がいいよ。
 でも、そう『唯一、許せるのは小樽港だよね』と、そのときの夏実お姉ちゃん。まさか、本当に小樽港で『蛍の光』を聞くとは思わなかった。
「実夏、歌う?」
「うん。いいよ」
 イントロが終わって二人で声を合わせた。
「♪小樽の光 窓の雪…」
 いいじゃん。17歳でオヤジギャグ飛ばしても。

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《「ようこそ」の文字の下では、太鼓が披露され》
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■ 9月5日 小樽出帆 =リドデッキ
 プールがある屋上のリドデッキは、開閉式の屋根を開けて、北海道の秋の大気をとりいれていた。見上げると、高い空が見えた。なんと、プールも営業していた。さすがに、誰も入っていなかった。
「実夏、今回はちゃんと水着持ってきたよ。いつ着る?」
「え、秋の北海道だよ。行き先はサハリンだよ。風邪ひいちゃうよ」
「プールに入らなくてもいいんだよ。水着でプールサイドを闊歩すれば」
「遠慮しておくよ。お姉ちゃん、一人で着替えなよ。あたし、写真ぐらいとってあげるよ」
「おそろいの水着持ってきたんだよ。ギンガムチェックの。わたしがワンピースで、実夏がセパレーツ」
「ああ、あれね。って、なんであたしがセパレーツなの。やだよ、秋の北海道でおへそ見せたら、風邪じゃすまないよ」
 夏実お姉ちゃんは、今すぐにでも船室に水着を取りに行きそうだった。にっぽん丸のプールサイドには更衣室がないからやめようよ、といっても、トイレかエステサロンで着替えるというだろう。なんとかして、気を紛らわせなきゃ。
「お姉ちゃん、そんなことより、ほら、リドバー営業しているよ。ホットドッグとショコリキサー、あるよ」
「えぇ、航海中なら、いつだって食べられるじゃん」
「そう? このあとディナーとナイトスナックがあるんだよ。おなかいっぱいになって食べられなくなっても知らないよ」
「実夏! さすがだね。いいところに気付いたね」
あたしたちは、プールサイドのリドバーで、黒毛和牛のハンバーガーとショコリキサーを注文した。北海道の秋空を見ながら、にっぽん丸船内最初の食事をとった。よかった。秋の北海道で水着、着ないで済みそうだよ。
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にっぽん丸紀行再開!!

 その後は、船の中を二人で巡った。那覇や江の島で乗ったときと大きく変わっていなかったけど、しつらえ品は初秋のサハリン仕様になっていた。
 フロントロビーには巨大な、等身大のマトリョーシカが笑顔で出迎えていた。いくら巨大だからって、一人ぽっちじゃさみしくないのかな?って思ったら、4階のツアーカウンターに、同じデザインのマトリョーシカがぞろぞろと並んでいた。心配して損した。
 売店の向かい側の図書室は、北海道の物産展が開かれていた。おなじみの北海道銘菓も並んでいる。ジャガイモのような農産物もあった。こんなときの植物検疫、どうなるのだろう。ロシアのお土産は、売店のかわいいマトリョーシカのキーホルダーやストラップだけ。以上。ほかになし。チャイキャベちゃんや涼南センパイへのお土産は「白い恋人たち」かな「わかさいも」かな。小樽も札幌も観光していないのに…。

おみや
《チャイキャベちゃんや涼南センパイへのお土産は》

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