実夏の あっ地こっ馳 紀行

ご注意;★このブログの登場人物はフィクションです。
■ 9月5日 小樽出帆 = ドルフィンホール
 

 夕食後は、ドルフィンホールでコンサートがあった。アカペラの男声合唱団だった。
 男の人が5人。いろいろなジャンルの歌を歌ってくれたけど、やっぱりイメージにぴったりだったのは、ロシア民謡だ。かつて、日本でも学生運動が盛んだったころ、ロシア民謡ブームがあったらしい。「カチューシャ」とか「ともしび」とか、CMソングかと思っていたら、ロシアの歌だったというのがたくさんあった。
「ねえ、ママたちも大学で歌ったの?」
「ちょっと、そんなおばさんじゃないわよ。失礼しちゃうわね」
「そうよ。私と弥生さんたちは、聖子ちゃんがステージを去ったころの歌で育ったのよ」
「チャゲアスとかミポリンとかね」
「キョンキョンはまだ頑張って、くすぶってたわねえ」
「わたしはMi-keも好きだったなあ。歌唱力あったし。『ブルーライト・ヨコスカ』とかね」
「サザンも元気だったでしょ。『稲村ジェーン』の『真夏の果実』」
 弥生ママとさくらママが思い出話を始めた。そんな歳なんだ、ふたりとも。でも、ぜんぜんロシアの歌じゃないよ。神奈川県の匂いがぷんぷんするよ。

 44DSCF5808.jpg
《夕食後は、ドルフィンホールで》
スポンサーサイト
尾花実夏☆ロシアまで*愛をこえて | トラックバック:(0) | コメント:(0) |permalink
■ 9月5日 小樽出帆 = ホワイトサラダ

 メインダイニングの「瑞穂」の入口で、パーサーさんが席を案内してくれた。窓の外は日が沈んで、青い色になっている。宮澤賢治の詩に書いてあった「玲瓏レンズ」って、こんな色かな。
 にっぽん丸の食事のことはもう、書かなくていいよね。おいしさの中に、暖かさが隠れている。心がこもっていておいしい料理は、確かににっぽん丸でなくても食べられるけど、そんな食べ物を500食大量生産するんだから、やはりこの船はすごい。すごいとか、おいしいとか、もうそんな言葉でしか表現できないなんて、あたしの文章力、まだまだだね。
 メニューのなかで面白かったのが、「ホワイトサラダ」だった。白い野菜を集めて刻んで、マッシュポテトの上に載せ、白いドレッシングで和えてある。お皿も白色だった。
「ひどい! イラストレーター泣かせだわ、このサラダ!!」
弥生ママが笑いながら叫んだ。白だけを使って、サラダをおいしそうに描くのって、難しいだろうなあ。ママ、がんばって!
 でも、このサラダ、白いだけじゃないんだ。ダイコンか何かを型抜きしたものが載っていた。その形が北海道の形だった。これ、厨房で一つひとつ、500個抜いたんだろうか。

 rrDSCF5787.jpg
《白だけを使って、サラダをおいしそうに描くのって》
尾花実夏☆ロシアまで*愛をこえて | トラックバック:(0) | コメント:(0) |permalink
■ 9月5日 小樽出帆 = ウェルカム・ディナーが待っている

 日本海に夕日が沈むと、夕ごはんの時間だ。ダイニング「瑞穂」でウェルカム・ディナーが待っている。
 夕ごはんから寝るまでは、ドレスコードが決まっている。ほんとうなら今日は出帆日だからドレスコードはカジュアルのはずだ。そんなことをいってたら、2泊3日のショートクルーズではおしゃれをするチャンスがない。今日のドレスコードはスマートカジュアル。にっぽん丸ならではの、気取らないおしゃれができる晩だ。
 夏休みに夏実お姉ちゃんが作ったタイタニックドレスは、フォーマルすぎてコードに合わない。そのあたりを何度も念を押して、どんな洋服にするかは夏実お姉ちゃんに任せた。自分で選んでもいいんだけど、一生のうちに何度あるかわからない、きょうだい二人のクルーズ・ディナーだ。コスチュームマニアの姉に任せてあげるのも、かわいい妹としてのせい一杯の姉孝行だ。半分は面倒くさいだけなんだけど。そして、かなり勇気いるけど。
 スーツケースから夏実お姉ちゃんが取り出したのは、紺色とベージュのスーツだった。お姉ちゃんがスカートとブラウス。あたしがボレロのアンサンブルだった。船室で着けてみるとけっこう清楚な少女に見える。オバサン受けしそうなデザインだね。外に出ていこうとすると、
「ちょっと待って、これ着けて」
って、夏実お姉ちゃん。手にはベージュのカチューシャがあった。え?この歳でカチュですかぁ!?
「だって、ロシアっていったら、カチューシャでしょ。カチューシャかわいや別れの・・・」
 はいはい。着けますよ。だから、お姉ちゃん、大声で歌わないで。

44Dinner
《船室で着けてみるとけっこう清楚な少女に見える》
尾花実夏☆ロシアまで*愛をこえて | トラックバック:(0) | コメント:(0) |permalink
■ 9月5日 小樽出帆 = クルーズ説明会

 船室に戻ってメモ帳とシャーペンをとってきた。ドルフィンホールには二人のママと夏実お姉ちゃんが先に入っていて、席をとっていてくれた。
「あれ?トラベルライターになるのに、筆記用具は肌身離さずもっていないの」
って、夏実お姉ちゃんが冷やかす。うるさいなあ、もう。
 弥生ママは小型のスケッチブックを広げて、絵や文字を書いていた。ホールのインテリアやお客さんの様子を次々に紙に写しとっていた。説明が始まると、パーサーさんの表情や仕草を描きながら、言葉で説明してくれたことを文字にしていった。速い! ママの特技を目の前で見せられてしまった。
 説明会はわかりやすかった。サハリンの気候、歩き方、オプショナルツアーの内容など、詳しく、といっても、ネタばれしないように、わくわく感たっぷりに教えてくれた。学校の授業も、こんなふうだったらいいのにね。

44DSCF5724.jpg
《わくわく感たっぷりに教えてくれた》
尾花実夏☆ロシアまで*愛をこえて | トラックバック:(0) | コメント:(0) |permalink
■ 9月5日 小樽出帆 =
 
 空色の空と水色の日本海の間に、初秋の北海道の深くて淡い緑色の森が見えている。大型フェリーの岸壁を見ながら赤灯台を交わすと、小樽の街がだんだん遠くなる。日本海、港、船出、といえば演歌の世界になっちゃうけど、もっとカラっとさわやかだった。
 小樽港を出帆したらすぐに航海の説明会が始まる。出入国手続きや、オプショナルツアーの案内をしてくれる。あたしはいつまでもこの景色を見ていたかった。だから、ちょっと弥生ママに甘えてみた。
「弥生ママ、説明会、出なくていいかな?」
「強制じゃないけどね…」
 なにか含みをもたせて笑っている。いやないい方だなぁ。
「けど、なぁに」
「実夏は旅行作家になりたいんでしょ?」
「そうだよ。だから、この景色、眼と胸に焼きつけておきたいんだ」
「それは、カメラマンとかイラストレーターさんのお仕事。この景色なら、文章量は160字ぐらいですんじゃうでしょ。ライターさんは、人の話を聞いて読者に伝えるのが本業なの。今度の航海はママもイラストだけじゃなくてテキストも書かなきゃいけないから、説明会の取材もするわよ。実夏だって、メモ帳もって話を聞いてみたら? 取材の練習になるよ」
 そういわれてしまえば、いいかえせない。後ろで夏実お姉ちゃんが笑っている。悔しいなあ。

44DSCF5716.jpg
《あたしはいつまでもこの景色を見ていたかった》
尾花実夏☆ロシアまで*愛をこえて | トラックバック:(0) | コメント:(0) |permalink
| ホーム | next >>