実夏の あっ地こっ馳 紀行

ご注意;★このブログの登場人物はフィクションです。
■  9月6日  サハリン = ダーチャのおもてなし

 ピクニックテーブルの上の料理は、ダーチャの菜園で採れたものばかりだった。粉吹きいもはほかほかで、塩味。緑色のハーブが振ってある。バジルかな。トマトは何種類もあった。なかにはナスのように細長いトマトもあった。生で食べると、ほんのりと酸味が聞いていておいしい。皮が厚くてプチプチする食感もいい。日本では甘さを誇るトマトが増えている。直売所でおじさんたちが「トマト本来の味がなくなった」と嘆いてる。アナトリーさんのトマトは、こトマト本来の味がする。直売所のおじさんに食べさせてあげたくなった。
 スープはボルシチ。ロシア料理の定番だね。ダーチャのボルシチは、野菜たっぷりだ。トマトの色だか、ビーツの色だかわからないが、汁の色も赤みがかって、ミネストローネに近かった。これに、「スメタナ」と呼ばれるプレーンヨーグルトを入れて飲むと、キレが出る。ヨーグルトとトマト、二つの酸味が相まって、口の中でエコーしている。
 チーズのように見えたのは、「塩漬けブタの脂身ですよ」と立柳さんが教えてくれた。豚は脂身が一番おいしい、と藤沢の養豚農家さんから聞いたことがある。残念ながら日本の豚肉ほどのコクはなかったが、むしろそのさっぱり感がダーチャの庭での昼食に似合っていた。雨はいつの間にか上がっていた。北国の早い秋の雨上がり。冬支度の合間にお邪魔した、っていう感じだった。

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《粉吹きいもはほかほかで、塩味》
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■  9月6日  サハリン = ウォッカの飲み方教えます

 乾杯が終わると、アナトリーさんが本場のウォッカの飲み方を教えてくれた。立柳さんが通訳してくれる。
「いいかい、右手にウォッカを持ったら、左手でライ麦パンを掴むんだ。パンの匂いをこうやって一気に嗅ぐ。すぅーぅっっと、な。その匂いが鼻孔に残っている間に、ウォッカをキュッと飲(や)る。2杯目も同じように、パンの匂いを酒肴にして飲むんだ。え?パンはいつ食べるかって? ウォッカ飲んでるのに、パンは食べないだろ」
 日本のお酒飲みが、拳の上に乗せた塩を肴に日本酒を飲むのと、どこか似ているね。ロシア人のウォッカ好きって、本当なんだ。

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《右手にウォッカを持ったら、左手でライ麦パンを》
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■  9月6日  サハリン = ギャンブレル形の屋根

 小雨の中、バスを降りた。目の前のダーチャ小屋は、緑とクリーム色に塗り分けられていた。ギャンブレル型の屋根…ほら、牧場の牛小屋でよく見かける中折れ型の切妻屋根だよ。ディズニーのおとぎの小屋を、江ノ電色に塗ったという感じだった。小屋といっても、2階建てで、奥軽井沢の貸し別荘や、東京郊外の安い建売住宅くらいの大きさはある。
 菜園の部分も広々としていた。どのくらいの面積があるのかな? 日本でいうと、区画整理された田んぼの3分の1ぐらい。ということは、区画整理された田んぼが1反で10アールで300坪だから、100坪ぐらいかな。いくら広大なロシアだからといって、広いよね。
 畑のほかに、小さな温室や池もあった。リンゴの木も植わっていた。ギャンブレル屋根の小屋とは別に、農機具などを入れておく納屋もあった。菜園を楽しむ施設は、一通りそろっている。ソビエトの時代から、コツコツと揃えていたのだろうか。
 納屋の前にピクニックテーブルがあり、その上をブルーシートで仮設の屋根を張っていてくれた。小雨の中、椅子もテーブルもタオルで丁寧に拭われていて、濡れていなかった。

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《ディズニーのおとぎの小屋を、江ノ電色に塗ったという感じ》
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■  9月6日  サハリン = ダーチャ村

 バスは、コルサコフの街の海食崖をぐっと登って、ユジノサハリンスクへ向かう広い道路を走っていた。この辺りが鈴谷平原の入り口だ。10分も走らないうちに、信号もない交差点を右折して、灌木の林の中に入っていった。にっぽん丸のツアーだから不安はなかったけど、なんだか、このまま身ぐるみはがされてもおかしくないような森だった。そんな平原の縁を軽く登っている。
 突然、林の木が低くなり、明るくなった。道の左側に、かわいい小屋がぽつぽつ建っている。それらの小屋が、ダーチャの作業小屋兼別荘だった。この辺りは、ダーチャがたくさんある「ダーチャ村」だ。日本語にすれば、家庭菜園団地。なんか、さみしい語感だね。あたしたちのバスは、その中の一つの小屋の庭に入っていった。

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《この辺りは、ダーチャ村だ》
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■  9月6日  サハリン = 立柳さん
 にっぽん丸のツアースタッフは、水色のおそろいのポロシャツを着ている。制服というわけではないだろうけど、一目でわかるし、活動的だし、なんといってもかわいい。あたしたちのダーチャ・ツアーの添乗員さんも、そのシャツを着ていた。20代後半だろうか。ショートボブで、ポロシャツと笑顔が似合っている。
「初めまして、立柳安理沙(たちやな ありさ)と申します。じつは、学校でロシア文学を専攻していて、ツアーコンダクターの仕事は年に数回しかしていません。慣れていないこともありますけど、よろしくお願いします」
と自己紹介してくれた。きのう、モリさんが教えてくれたとおり、文学に詳しいガイドさんだ。あたしにとって、最高の人選だ。
 立柳さんさんが、運転手さんに「ミーニャ、ザブート、タチヤーナ」と自己紹介する。運転手さんが「そうかい、タチヤーナちゃんっていうのかい」みたいなリアクションをした。タチヤーナさんって、ロシアではわりと一般的な名前らしい。
 ツアー中の注意事項と簡単な案内をしてくれたあと、立柳さんは補助いすをばたんと倒して、私たちの隣に腰かけた。
「モリさんから聞きましたよ。宮沢賢治の謎、解いているんですって?」
 夏実お姉ちゃんのほうを向いてそう話しかけた。
「それをやっているのは妹のほうです」
「あら、ごめんなさい」
「立柳さんも宮沢賢治を?」
「いいえ、私の専攻はチェーホフ。『かもめ』を一語一語読み解いているの。読んだこと、ある?」
 文芸部で文士劇をやるだの、やらないだのといったとき、流し読みしたことはある。デカダンじみた劇中劇のヒロイン、ニーナさんがアイドルスカウトに引っかかって、殺人事件に巻き込まれるという…え?違ったっけ。
 あたしの『かもめ』のあらすじを聞いて、立柳さんと夏実お姉ちゃんが腹を抱えて笑った。
「実夏、ちょっと、そんなんでホントに宮沢賢治の謎、解くつもり?」
 いいじゃん。賢治もきっと、「『かもめ』は関係ない。波に聞け」っていってくれるよ。

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《わたしゃ立つ鳥、波に聞け》
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